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衰退期の企業に必要なもの


 以前に取り上げた日本ビクターに、具体的な売却の動きが出ている。結局は外資系のファンドが表舞台に現れる形となったようだが
 同社を含め、先行きが思わしくない企業の再生には、リストラと事業開発の両輪が必要となる。どちらが欠けてもうまくいかない。だが、残念ながら、リストラは徹底的に進めるが、新たな事業開発に向けては足踏みしてしまっている企業が圧倒的に多いように思う。リストラは過去の清算であり、考え方はネガティブになりがちだ。これを推し進めていく片方で、新たな事業創造と言う前向きな考え方はなかなか持てないらしい。

 日本ビクターは売却された結果として、新事業モデルを再構築し製造業として過去の栄光を取り戻すことができるのであろうか。それとも、その知名度が高いブランドだけが誰かに引き継がれ、あとは「切り売り」という無残な結果になってしまうか。今後ともその成り行きを興味深く見守っていきたい。ただここでは、前者の方向性で、その進むべき道を考えてみたい。この問題は、この時代に生きようとするメーカーなら誰もが考えておくべきことであるからだ。

 企業は、組織が誕生した瞬間から変化を始める。ここではそれを、創業期、成長期、安定・衰退期の3段階に分けて考えてみる。

 創業期の企業は、資金、人材、販路、経営戦略のどれもが不充分である。あるのは事業のアイデアやコアとなる技術のみだ。これを基に事業価値の創造を遂行していく段階である。この段階の起業家は、アイデアとモチベーションに溢れ、思考は発散している。

 次の成長期の段階になると、経営戦略や販路が確立してきて、キャッシュフローも回り始めている。不足しているのは人である。採用と教育が大きな問題になり、これが成長を続けるためのネックとなる。業務上の課題は明確で、スタッフの思考は収束傾向にある。

 この段階を通り過ぎ成長した企業が迎えるのが、安定・衰退期だ。安定した状態が長く続くケースもあるが、外部環境が急速に変化し、これに対応できず衰退していく企業も数多くある。この時期の最重要課題は、いかに新事業を創出していくかするかなのだが、多くの企業で、これに失敗するのである。

 人は、目の前のできること、やらなければならないことについつい目を奪われる。だから、会社の業績が悪化すると、リストラばかりに意識が集中してしまうのだろう。もう一つ、落とし穴がある。人は自身の成功体験をとても重要視する。これは人が進化の過程で会得してきた特性なのだろうが、変化が激しすぎるビジネス環境にあっては、しばしば成功体験が致命的なアダとなるのだ。過去に成功をもたらしたビジネスモデルは、広く知られ、かつ時代遅れのものになっている。それにも拘わらず、多くの企業がそのモデルを変えずに販路開拓に走る。その結果は明らかだ。コスト競争に巻き込まれ、企業の体力が奪われていく。

 こうした苦境に陥った衰退期の企業が、再び活気を取り戻すために必要なのは、創業期の企業が持つ新鮮なアイデアと発散志向である。これがあればこそ、新たな事業・製品コンセプトが生まれ、それに基づいた経営戦略やビジネスモデルが構築できる。しかし、衰退期の企業では、創業期の企業とはケタ違いの人材や資金力を擁しているにもかかわらず、これを実践できないケースが多い。経営者だけでなく、多くの管理職、従業員までもが過去の成功体験に捉われ、どうしても思考が収束傾向になるのだろう。業績悪化やリストラによるモチベーションの低下という問題もあるかもしれない。そしてこのことが、事態をさらに悪化させていく。

 これを是認し、「衰退した企業は表舞台から去り、アイデアとモチベーションに溢れた新しい企業がそれに取って代わればよい」という考え方もあるだろう。だが、それほど素直に諦めることもない。老舗企業でありながら、新たな企業として生まれ変わり、見事に復活を遂げるという例も、世の中には多くあるのだから。

 そうなるために必要なのは、過去の成功体験を一度すっぱりと捨てることである。その上で、新しいアイデアやコンセプトを導入する。それが内部からは湧き上がってこないのであれば、外部に求めればよい。よく知られているように、シリコンバレーにはこれが得意な企業が多い。自社の技術より他社の技術の方が良いと思えば、躊躇なく採用する。技術だけでなくコンセプト、ビジネスモデル、デザインから人材まで、ビジネスを構成するあらゆるモジュールが組み替えの対象となる。これが、企業を老いさせない一つの方法なのだろう。

 日本にそれができないはずはない。衰退期の企業といえども、手元には新興企業などとても太刀打ちできないほどの資金や人材を保有しているはずだ。これを活用し、外部の新しいアイデア、人材、ビジネスモデルを取り入れることももっと積極的に考えればよい。例えばベンチャー企業とのアライアンスも、一つの方法だ。

 先日、何人かのベンチャー企業の経営者たちと動画配信に関して議論した。思考は発散し、数々の方向が異なるアイデアが出たが、その一つをヒントに、「動画」という切り口で一つのコンセプトを提示してみたい。

 現在、動画配信で注目を浴びているのがYouTubeだ。サイトは日本語化されていないのに多くの日本人が動画を投稿している。その投稿されている動画の多く画が、携帯電話により録画されたものなのである。そのため画質が低いのだが、それよりも人は利便性を優先させるのだろう。

 一方で、日本製ムービーカムの多くは、携帯電話の動画機能とは逆をいく。高画質を追求しているのだ。このため、機器は携帯電話に比べ大きくなり、とても常に携帯しようと思えるものではない。それでも、子供の運動会などではほとんどの親が携帯電話ではなく高画質のムービーカムを使う。

 ここにヒントがある。携帯電話の利便性と高画質ムービーをうまく組み合わせられないか、ということだ。ムービーカムの利用者は、たぶん録画した動画を持ち帰り、編集するかそのまま保存する。祖父に孫の姿を見せる、といった場合にはダビングして送っているだろう。手間だし時間がかかる。けれど、現在の携帯電話ではムービーカムの高画質の動画をそのままYouTubeなどの動画サイトに送ることは現実的ではない。

 そこで、ムービーカムで録画するときに、低画質の動画も同時に生成できるようにしたらどうだろう。ムービーカムが無線でポケットの中にある携帯電話と繋がり、携帯電話が動画投稿を受けるサイトに接続し、そこにアップロードできるようにするのだ。動画がアップロードされたことを予め登録してある複数の人にメールで知らせる機能を追加すれば、ほとんど「ライブ」で、孫が運動会で活躍する姿を祖父が自宅で見ることができるようになる。

 これを読んで読者はどう思われるだろうか。「そんなことは誰でも考えられることだ」と感じるかもしれない。そう、誰でも考えられるかもしれない。だが、誰にでもできるわけではない。これを実現するには、ムービーカム・メーカーの力だけでなく、携帯電話機メーカー、通信事業者、動画配信サイトなどの協力が必要になるだろう。その実行力、プロデュース力がこれからは問われるのだと思う。あるいは、「そんなことができる人材は社内にいない」と思われるだろうか。そう思った瞬間に、このアイデアは単なるアイデアで終わる。

 あるメーカー企画担当者と話していたときのことである。この企業は、自社製品の新たな活用方法を消費者に提案する試みを模索している。このために複数のベンチャー企業とアライアンスを考えているのだが、担当者の口から「ベンチャーが失敗してもこちらは痛くも痒くもないが、成功すればプラスαの利益が得られる」という発言が漏れた。これをどう捉えるべきなのだろうか。

 私はこう思う。彼の発言を不謹慎だと言うのは簡単だが、そうは思わない。ビジネスはビジネスである。リスクを最小にしようとするのは当然だ。そのうえで新しい機会とモデルを試そうとする彼の意欲こそ、積極的に評価すべきではないだろうか。
(アイキットソリューションズ 生島大嗣)


●筆者紹介
生島大嗣(いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動している。生島ブログ「日々雑感」も連載中。執筆しているコラムのバックナンバーはこちら。

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。



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